起きた
ひさひざにこんな時間に起きた。
記憶を抹消する方法は、ないだろうか。
お前の選択は、いつも間違っている。
わたしを狂わす呪文のように、彼が言い放った言葉。深い傷と今でも判断を鈍らす元に。
いつも、迷いなく自分の本能のおもむくままに、信じて判断してきたのに、はじめてできなくなった。その言葉は、わたしの今までの人生を全否定したからだ。なぜなら、自分のはんだんのもと、生きてきたわけで、わたしに、生きるな。と、言ったも同然である。
俺の判断は、いつも間違っていない。
と、言った彼はいつも自信に満ち溢れていた。たしかに、正しいのかもしれない。自分が傷つくことは一切せずに、誰かを傷つけることで勝ち取った幸せ。こそが、今までの彼の人生だから。
多少の犠牲は、自分の幸せのためなら、あって当然とでも言いたいのだろうか。あなたが、それを幸せ。というならば、そうかもしれない。
人生は、巡り巡る。
いいことも。わるいことも。循環する。決して逃れられない事実を彼は作り続けて、いつしか自分をいつも苦しめてきたはずなのに、今再びそれをした。でも、本人は、必死に、そうじゃない。と、記憶を塗りかえようとしている。
いいとか。わるいとか。じゃなくて、それが人間なのかもしれない。人は弱いから。